Kazunoriの思考と日記

28歳男・IT企業事業企画/推進・一児のパパ・タイ人の妻・埼玉在住の人がまじで徒然なるままに書いているブログ

売値を下げることはすなわち会社の首を締めることと同義である

最近、管理会計を勉強しております。以下の管理会計の基礎を学ぶには、以下の本がとてもわかりやすくオススメだとおもいました。

 

books.rakuten.co.jp


さて、表題の件について話す前に、そもそも管理会計とは何かということを説明しようかと思います。

管理会計とは、簡単に言えば「会社の儲けを創出するための会計の考え方」と言えるでしょう。売上が~で、コストが~だから結局~円儲かるねってことを、考えるためのものです。

では、これはB/SやP/Lを作成するための財務会計と何が違うのかという話ですが、そもそもこの2つはゴールが全く異なります。

財務会計は、税務署や株主のための情報開示を目的として、法律により定められた一定のルールに従い財務諸表を作成するためのフレームワークであり、対外的なものになります。そこに儲けるための手法や情報の見える化という概念は存在しません。

それに対し管理会計は、「どうやったら儲かるのか」をあくまで内部で考えるためにある、情報の見える化の手法となります。会社が儲けを生むために適用されるフレームワークとしてより重んじられるべきなのは、この管理会計なのです。

では、管理会計とは一体どのようなものなのでしょうか?
この問いを、「限界利益」という言葉を用いて説明します。

管理会計で最も重要視されるKPIは「限界利益です。限界利益とは、粗利益とも言われたりするのですが、売上-変動費で算出される値を指します。

売上は、皆様が想像する売上と齟齬がありません。問題は変動費です。変動費は、コトバンクによりば、以下が定義となります。

生産高や売上高に比例して発生する費用で、中心となるのは原材料の仕入費用や外注費用など。

 
「あれ、これを変動費と言うならば、「限界利益」は財務会計における「粗利益」と同じじゃないか。」

と皆様思われるでしょう。

ここで思い出してほしいのは、財務会計は一定のルールに沿って対外的に実施されるものである一方、管理会計はあくまで自社で儲けるため手段を考えるために実施されるものであるといことです。

財務会計における粗利益は「売上-仕入れや外注費等のコスト」で一意的に決まる一方、限界利益における変動費の定義は、各会社の「儲けるためのモデル」により、いくらでも変わってくるのです。

あるIT企業を例に、この変動費の定義が流動的に変わることについて説明しましょう。

あるIT企業においては、限界利益の定義は以下のようになります。

限界利益=売上-変動費仕入高+外注費+受注後のSEや開発メンバーの稼働コスト)


上記の式で特徴的なのは、「受注後のSEや開発メンバーの稼働コスト」なのではないでしょうか。

稼働コストとは、いわゆる人件費とほぼ同義です。あれ、だったら、人件費は毎月決まった額が支出される「固定費」になるはずなのに、なんでSEや開発メンバーの稼働コストは変動費となるのでしょうか?

SEや開発は、ある情報サービスを提供するためのアプリやWebを開発構築したり、それを常に正常に利用できる状態にするのに保守・運用を実施します。

言うなれば、SEや開発の稼働は、その会社における売上に直結します。また、SEや開発のリソースは有限であり、ある案件で大きな稼働をかけている場合は、別の案件での稼働分が犠牲にされるというまさにゼロサムなリソースとなります。

管理会計が、「儲けの見える化」のためにあるなら、このような儲けに直結するようなリソースは、常に売上と結びつかれ、管理されないといけません。だから、ITに企業における限界利益を求めるための変動費の定義には、SEと開発のリソースが織り込まれるべきなのです。

さて、前置きが長くなりましたが、ここで表題の「売値を下げることはすなわち会社の首を締めることと同義である」の登場です。

お客様の希望に合わせ、競合に合わせ売値を下げることは、一番最後に考慮されるべき、頻発すべきでない営業戦略となります。

何故かと言うと、その売値の減額分が、そのまま限界利益の減額分となってしまうからです。

なんでなのでしょうか?それは想像に難くないと思いますが、売値が下がったからと言って、そのプロジェクトにかかるSEや開発の工数はその分下がるわけではないからです。つまり、変動費は全く下がらないのに、売上高だけ下がるので、その売上高の下がる分利益が減ってしまうのです。

簿記の原価計算にもよくある考え方なのですが、「変動費」なので、売上が下がる分だけ変動費が下がると考えるのは大間違いです。プロジェクトの売上が下がるんだったら、その分SEさんや開発メンバーの稼働を圧縮できるでしょうか? 答えは否です。

この限界利益の考え方をあたり前のものとして受け入れるためには、財務会計的な「売上×利益率=利益」という割合の考え方は捨てなければなりません。大切なのは、限界利益の「額」であって、「利益率」ではありません。よって、営業にとって評価される指標も、売上×利益率という考え方でなく、どれだけ儲けをもたらしたのかの「額」によるものでないといけないかと考えます。

最後の方は、僕のオピニオンがおもいっきり入ってしまったのですが、これで、売値を下げるということが、営業戦略にとって悪手になることを理解いただけたと思います。(もちろん、限界利益を考慮したうえで、それでも戦略として減額するということは考えられるかと思います)

管理会計を勉強して、会社が儲ける体制を作るためにはこの「限界利益」の考え方が大事であることを実感できました。そしてさらに重要なのは、そのような考え方が普及されるような土壌、制度を整えることだと思います。

 

安易に売上と、売上×割合で評価されるものにより、限界利益がマイナスのプロジェクトを受注してしまうと、その企業の首を締めてしまうことになるのですから。


おわり。